物流業務の効率化を推し進める!AGV導入の取り組み

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2018年5月。SBS東芝ロジスティクスの物流センターで、AGV(Automated guided vehicle - 無人搬送車)の運用がスタートしました。 AGVとは、自動で走行する無人搬送車のこと。これに台車を連結し牽引させることで、一度に大量の荷物を運ぶことができるようになりました。 導入に当たってもっとも苦労したのが、「物流現場の事情に即した牽引冶具を開発すること」と「人の作業の妨げにならない、安全で効率のよい運転ルートを見つけ出すこと」。導入までの約1年半、時間をかけて牽引冶具の開発や運用方法の検討を行ないました。 「物流現場での活用は難しい」――、そう思われていたAGVを、どのようにカスタマイズし、最適化していったのか。運用、開発、それぞれの担当者に、プロジェクトの詳細について語ってもらいました。

AGV牽引冶具写真

当社オリジナルのAGV(無人搬送車)牽引冶具とは?

AGVを活用するため、「平台車・カゴ台車の両方に対応できる」「最大で平台車6台、カゴ台車2台を牽引できる」「冶具を牽引した状態でUターンできる」などの特徴を持つオリジナルの牽引冶具を開発。台車を押える可動式のストッパーや転倒防止用クッションなどを備え、様々な形・個数の荷物をストレスなく運べるよう工夫しました(2019年1月に特許を取得)。

AGV(無人搬送車)で無駄を減らし、人手不足を解消したい!

――2016年10月にAGVの導入プロジェクトがスタートしました。AGVを導入しようと考えたきっかけや経緯について教えてください。

齊藤:物流現場の人手不足や高齢化が進んできたことがきっかけで、研究開発部門から、「AGVの導入を進めよう」という動きが興りました。 AGVは、主に工場など、運ぶものの大きさや形、数などが決まっている現場で使われることが多い技術です。物流現場のように不定期で入出荷があり、荷物の数、形、大きさ、種類がバラバラという現場では使いにくい。そのため、物流の現場で導入されたという話は、これまでほとんど聞いたことがありませんでした。だからこそ、うまく導入することができれば、現場が変わるのではないかと思ったのです。
これまでも、物流センターのレイアウトを変更したり、人員配置の見直しを行ったりと、様々な形で改善努力をしてきたのですが、AGVの導入で、より踏み込んだ業務改善を行いたいと考えました。荷物を運んだあと手ぶらの空歩行で帰ってくるカゴ台車をどうにかして減らしたい、ロスや無駄をなくしたい――、そんな思いで取り組み始めたことを覚えています。

――プロジェクトはどのようにして進んでいったのでしょうか? 最初に取り組んだことは?

齊藤:まずは採用するAGVについて検討していきました。AGVには、ガイドレス式のもの(センサーや画像認識技術を用いてガイドなしで走るタイプ)とガイド式のもの(磁気テープなどの上を走るタイプ)があるのですが、前者は、技術が確立されているとは言い切れず、セットアップに手間がかかり、しかも非常に高価です。一方のガイド式は、磁気テープでつくった線路の上を走るため設定が簡単で動きが見えやすく、比較的手ごろな価格で導入できます。工場で使われているAGVもほとんどがガイド式だとか。それで、ガイド式のものを採用することに決めました。
その後、機種の選定へ。当社の物流センターに適した~100㎏程度の荷物を運ぶことができるAGVをいくつかピックアップし、機能、安全性、価格などを比較検討していきました。その結果、「ユーザーで運行指示やセンサー類を細かく設定できる」「ガイドからガイドへと飛び移る(線路がなくてもある程度は走れる)機能がある」「保守運用体制が安定している」などの強みがあるトヨタL&F社のAGVを選定。納入運用実績も決め手になりました。

AGV導入、倉庫設計、運用担当の齊藤
AGV導入、倉庫設計、運用担当の齊藤

平台車・カゴ台車を複数個牽引できる、これまでにない牽引冶具を開発した

――今回のプロジェクトでもっとも力を入れたのが、「オリジナルの牽引冶具」の開発だと聞きました。どのような理由で冶具を開発することになったのでしょうか?

原田:物流現場でAGVの導入が難しいのは、最適な冶具がなかったから。様々な形、大きさ、重量の荷物を複数運搬できるような柔軟な冶具があれば導入が進むと考え、開発に着手しました。 開発は、台車に紐をつけて手で引っ張ってみるというアナログな実験を行うところから始まりました。 直線での動きはどうか、カーブでの動きはどうか……。そんなところに注目しながら、平台車をどんどんつないでいきました。 すると、平台車を数個つないだ状態でカーブを曲がろうとしたときに、慣性の法則で台車がバラバラになってしまうということがわかったのです。 まずはこの課題を解決すべく、試作1号機を製作しました。

齊藤:1号機は、2個の平台車をつなぐことができるシンプルなもの。 スムーズに動き、安全にAGVで牽引することができて、「これはよいものができたぞ」と、自信を持って現場での検証に送り出しました。 ところが現場から「カゴ台車も運べるようにしてほしい」「物量の変化にも対応できるようにしてほしい」「急ブレーキがかかったときに荷物が倒れないようにしてほしい」という要望が次々と……!  これをクリアするため、2号機、3号機と試作を続けていきました。

原田:改良する際に意識したのが、現場の方々にとっての負担をできるだけ増やさないこと。 AGVや冶具を導入するためにやることが増えると、それだけで活用が遠のいてしまいます。 ですから、「わざわざしゃがんで部品を調節しないといけない」だとか「工具を使わないといけない」だとか、そういった面倒な操作は排除するように心がけました。 その結果、「普段使っている平台車やカゴ台車を、冶具にスライドさせてはめ込めば使用できる」、「固定バーを跳ね上げるだけで平台車用からカゴ台車用に簡単に切り替えできる」という、使いやすい牽引冶具が生まれたのです。
完成した牽引冶具は、最大で、平台車6台、カゴ台車2台を牽引することができる柔軟性の高いもの。平台車の荷物がオーバーハングしていても牽引でき、また、可動式のストッパーを付けることで、台車が少ない場合でも安全に動くよう工夫しました。 その他、転倒防止クッションを付けることで万が一の急ブレーキでも製品が倒れないよう備えています。

開発したAGV牽引冶具
開発したAGV牽引冶具

最小スペースでのUターンを実現する「Y字ガイド」の発見

――運用面ではいかがでしょう? どんな工夫、どんな努力をしましたか? なにか印象に残っていることがあれば教えてください。

齊藤:もっとも印象に残っているのが、「Uターンのときのガイド改良」ですね。「少しでも少ないスペース・半径で、最小のターンを実現したい!」と考え、磁気テープを曲線ではなくY字に貼り付ける方法を編み出しました。 これは、トヨタL&F社のAGVに搭載されているガイドからガイドへと乗り移る機能を活用したもの。半日ぐらいかけてトライ&エラーを繰り返し、徹底的に測量を行って、Y字の角度を数度単位で調整することで最小スペースでのUターンができることを確認しました。
AGVを導入するために通路を広くしたり、新たにUターンのためのスペースをつくったりすることは、容易なことではありません。稼働する物流センターを止めることなく、極力、現在の状態のままで、負担なくAGVを導入してもらいたい。そのため、Uターンだけでなく全体的に、効率のよいガイドの引き方にはこだわりました。 その他、前方に向けて付いていた2本の障害物センサーを斜め45度に傾けて、安全性を高める工夫なども行いました。これによって、前方に人が飛び出してきた場合だけでなく、カーブなどでAGVの左右に人が入り込んできた場合でも検知できるようになりました。センサーの範囲が広まり、死角が減って、より安心してAGVを動かせるようになったと感じています。

カーブを曲がるAGVと牽引冶具
カーブを曲がるAGVと牽引冶具

AGVによる運搬距離が40mを超えると、工数の削減効果が期待できる

――牽引冶具、運用、様々な角度から「よりよい導入の方法」を探り、実際に導入されたのですね。2018年5月の運用開始から1年弱、効果や実績についてはいかがでしょうか?

齊藤:1回の運搬で運べる量が大幅に増えました。また、AGVでの運搬距離が40mを超えると、人が作業していたときに比べて工数の削減効果が期待できることもわかってきています。 他に、女性や高齢者が働きやすくなったところもメリットですね。重たい荷物をAGVが運んでくれるようになったため、作業者の負担が減って、転んだり怪我をしたりするリスクも軽減しました。

原田:私たちが開発したオリジナルの牽引冶具は、2019年の1月に特許を取得しています。今後も様々な現場から声を集めながら、改良を進めていきたいですね。

齊藤:2019年のうちに、新たな物流センターで、AGVと牽引冶具が稼働を開始する予定です。より効率よく、より便利に――。多くの物流現場でAGVが活用され、スマートロジスティクスが実現するとよいなと思っています。

牽引冶具開発者の原田
牽引冶具開発者の原田
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市販の物流機器では、ニーズが満たされない
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作業の安全性と品質を向上したい
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