ダイバーシティ 女性が活躍する物流現場

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「多様性」を意味するダイバーシティとは、職場では女性の活躍はもちろん、多様な人材を尊重し積極的に採用、また様々な人材が最大限に力を発揮できる職場環境を提供しようという考え方を意味します。このダイバーシティ推進は、昨今の物流業界の労働不足や高齢化が進む状況下では必要不可欠になっており、様々な国籍、性別、年齢の方の活躍が期待されています。物流業界は従来、男性が中心となることが多く、また男性を対象とした職場作りが多い傾向にありますが、SBS東芝ロジスティクスではこういった状況を問題視し、物流現場でも女性や外国籍の方が活躍できるダイバーシティな職場環境作りを推進しています。

SBS東芝ロジスティクスの具体的なダイバーシティ推進の取り組み

当社の三重ロジセンターでは、2016年より「レディースアイ=女性からの視点による働きやすい職場作り」と称したダイバーシティ推進活動を行い、これまで男女で役割が固定化していた重量物取り扱い職場において女性も活躍できる職場作りに取り組み、ダイバーシティの推進に貢献してまいりました。この活動で、男女間にあった役割分担の排除や女性の資格取得・能力向上、女性も安心安全に働ける職場作りを実現し、日本ロジスティクスシステム協会と日本物流資格士会が主催する「全日本物流改善事例大会2018」で「物流合理化賞」を受賞することができました。審査員からは「科学的なアプローチによって現状把握から企画、実行、評価まで明快なストーリーが描かれ、非常に汎用性の高い優秀事例」、「今回は女性視点であったが、シニアや派遣社員など、誰にとっても働きやすい職場作りを目指すのに応用できる」と評価されました。

活動のポイント

  1. 暗黙の了解の性的役割分担、重量物の取り扱い、女性の免許資格取得者が少ない、といった要因により男性しか扱えない作業工程が存在、そこで停滞ロスが発生。
  2. 男性作業者も巻き込み、男女間の役割分担の払拭、女性への教育の充実、免許資格取得者の拡大を実施。それにより、課題であった工程内の停滞ロスが改善し、さらに女性が活躍できる職場の数が拡大した。

きっかけは「男性に頼らずもっと活躍したい」という強い思い

「レディースアイ=女性からの視点による働きやすい職場作り」活動が発足した三重ロジセンターは、小型モーター・変圧器・インバーターなど1個10~500kg、重たいものでは10tを超える重量物を扱う職場です。レディースアイ活動ではまず「現場で困っていること」をテーマにブレインストーミングを実施、女性ならではの視点から作業現場の現状を把握しました。 その結果、複数職場の工程で男性しか対応できない工程の前後で“待ち”や“引継ぎ”から停滞ロスが発生していることが確認できました。 現場では男性・女性の役割分担ができておりフォークリフト・クレーンといった免許が必要な作業は男性の作業となっていました。 そのため男性は他の作業も掛け持ちしており女性がフォークリフト、クレーンが必要な作業まで完了した際、男性を呼びに行く必要がありました。 これにより8工程の内5箇所のインタフェースで停滞が発生しており、最大で9職場45箇所のインタフェースで停滞ロスが発生する可能性がありました。

図表1:停滞ロスが発生する出荷業務工程
図表1:停滞ロスが発生する出荷業務工程

さらに、女性作業グループでは作業応援ができる職場が限定的であり女性のグループでは9職場の内、応援実績があり作業応援できるのは3職場に限られていました。 また女性単独作業が可能な職場数は0でした。ほとんどの工程で男性しか対応できない状況は男性社員に負荷がかかっており、出荷業務の期平均の残業時間は1,300時間/月、出荷個数当たりの残業時間は4.19分/個でした。

図表2:残業時間の実績
図表2:残業時間の実績

メンバー全員は「男性に頼らずもっと活躍したい」という今の状態に満足せずもっと活躍できる職場作りを推進しようという意見に一致し、レディースアイ活動では、「工程間の停滞ロスのゼロ化」、「全職場の作業応援可」、という目標を設定、改善を推進しました。

  • 最大で9職場45箇所のインタフェースで停滞ロスが発生する可能性
  • 9職場の内、応援実績があり作業応援できるのは3職場
  • 女性単独作業が可能な職場数は0
図表3:レディースアイ活動 打ち合わせ
図表3:レディースアイ活動 打ち合わせ

問題は暗黙の内の男女の役割分担

改善に向けてまず要因分析を実施、大きく3つの要因が分かりました。

  1. 男女間に作業の役割分担が暗黙の内に発生している

    もともと重量物を扱う職場は男性がメインで、女性は補助要員でした。しかし、高齢化による男性作業員の定年退職や欠員が増えているにかかわらず、体制は見直されていない状況でした。
  2. 重量物の取り扱いや運搬が女性には難しい

    ある工程では1個25~40kgもある部品の梱包を扱います。男性は手で扱うことが出来ますが、男性作業員を前提に考えられた職場のため、重量物を持ち上げる機材などなく女性では扱えませんでした。
  3. 女性が作業範囲を広げていくには資格が足りない

    男性しか扱えない工程では、免許が必要なフォークリフト、玉掛、クレーンの運転がありました。しかし、女性作業員の中でそれらの免許を取得しているのはごくわずかでした。これは、役割分担の下、女性の積極的な資格取得や教育への参加が少なかったためでした。そのため、作業できる職場、工程が限定的になっており、男性作業員の負荷が軽減されませんでした。

男女間のコミュニケーション活性化が改善のカギ

抽出された3つの要因に対して、「なぜそうなっているのか」、「どうすればよいか」、「どのようにすればよいか」を徹底的に議論し、改善策を立案しました。
 一つ目の要因の改善策では、性的役割分担の払拭を方針として、「男女双方によるあるべき姿の共有」を実施しました。具体的には、「現在の暗黙の役割分担を女性全員で認識」、「女性が単独で作業完結できる職場を目指すことに男性の理解を獲得」、「免許・資格取得や作業の教育・訓練を男性に依頼し承諾して頂く」、「男性職場長と女性職場長との定期的なコミュニケーションの場を設定」を実行しました。 職場のあるべき姿“工程の停滞ロス”、“男性作業員の負荷軽減”について男女ともに同じ認識を持ち、双方に協力した改善活動にしました。

図表4:男女職場ミーティング
図表4:男女職場ミーティング

 二つ目の要因、“女性による重量物の取り扱い”については女性だけでも重量物を取り扱うことができる機材の導入、女性向けの機材の使い方教育、訓練を実施しました。これにより、男性に依頼することなく女性だけで重量物の扱いが可能になりました。
 最後の要因、女性の資格・免許保有者、については教育訓練計画を策定、職場で必要な機器・機材の資格・免許取得を推進しました。また、資格・免許だけでなく、職場における作業方法、製品の知識の習得には積極的な教育の開催・参画により、どの職場でも女性が作業できるようになりました。
 それ以外にも女性による安全巡回・3S活動を実施し、女性の視点で安全、安心な現場を実現しました。

レディースアイ活動により停滞ロスが改善

―女性の免許・資格の取得が進み、全職場において女性の作業応援が可能になり、最大で9職場45箇所のインタフェースで停滞ロスの可能性がありましたが、改善後は0に減少しました。出荷業務では改善前は3工程しか対応できなかったところ、改善後には全8工程の作業が男性の応援をもらうことなく女性のみで作業できるようになりました。

図表5:改善後の出荷業務工程
図表5:改善後の出荷業務工程

女性の作業応援工程が増加したことにより、男性作業者の負荷も軽減されました。出荷個数当たり4.19分/個であった残業時間は、2.78分/個までに削減されました。

図表6:出荷個数当たりの残業時間の推移
図表6:出荷個数当たりの残業時間の推移

また、以下表の通り、活動を推進した2017年上期は、2016年下期と比較して出荷件数が増加しているにも関わらず、残業時間は1,340から980時間に減少、職場全体で生産性が向上しました。

図表7:出荷個数と残業時間の推移
図表7:出荷個数と残業時間の推移

さらに従来の役割分担にとらわれる事なく女性作業者の能力向上に対する意識が向上、男女間も含め職場内のコミュニケーションも良くなりました。「男性に頼らずもっと活躍したい」というメンバーの思いが達成されました。

「ホワイト物流」推進運動改善比較表
評価ポイント 改善前 改善後
停滞を起こし得るインターフェースの個所数 45 0
女性単独作業可能職場数 3 9
女性作業応援職場数 3 9
出荷個数当たり残業時間(分/個) 4.19 2.78

「女性が活躍する物流現場」へ

ダイバーシティを推進する活動は始まったばかりですが、本活動により女性が活躍する物流現場、女性が働きやすい職場作りの第一歩を踏み出すことができました。SBS東芝ロジスティクスでは、これからもこの活動を継続し、全国、全世界のSBS東芝ロジスティクスグループ会社へ展開、女性がさらに活躍・キャリアアップできる職場、また多様な人材が活躍できる”ダイバーシティ”な職場・環境作りを推進していきます。

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