ToshibaGuideBook2026
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19デジタル化・グリーン化社会の課題解決やビッグデータ社会への貢献を目指し、産業、車載、データセンター領域などに向け、高付加価値な半導体製品やストレージ製品を提供しています。シリコンパワー半導体においては、日本初となる口径300㎜ウエハーに対応した量産ラインを立上げ、世界トップクラスの高効率を誇るパワーMOSFETや東芝が世界に先駆けて開発したIEGTなどのラインナップを拡充していきます。さらに次世代の化合物半導体(SiC、GaN)デバイス開発を推進し、それぞれ材料固有の特長を最大限に引き出すデバイス技術・設計技術を通して、機器の高効率化、小型化、高信頼化を実現していきます。また、HDDのさらなる大容量化を実現する次世代磁気記録技術「熱アシスト磁気記録(HAMR)」を用いたHDDと「マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)」を用いたデータセンター向けの3.5型ニアラインHDDとして、30TB超の記憶容量の実証に成功しました(※1)。産業ノウハウを持つ強みを活かし、IoTやAIなどのデジタル技術や量子技術を活用した新たなサービスや価値をお客様やパートナーと共創してまいります。例えば、組合せ最適化ソルバー「シミュレーテッド分岐マシン(Simulated Bifurcation Machine 以下、SBM)」を核にソリューションとして体系化した、量子インスパイアード(※2)最適化ソリューション「SQBM+™」を提供しており、用途に応じた最適化ソルバーをラインナップし、アルゴリズムには速度・精度・規模を大幅に向上させる新たなSBアルゴリズム(※3、4)を採用しています。各分野の専門知識を持つパートナーと連携・共創し、金融・創薬・遺伝子工学・物流・AIなどさまざまな領域で複雑化する社会課題の解決に貢献していきます。上記事業領域における研究開発の他、研究開発センターを中心として将来に向けたフロンティア領域の研究開発を行っています。新型太陽電池では、世界で初めて透明化に成功したCu2O発電層を用いた「Cu2Oタンデム」(※5)の開発を推進しています(図2)。「Cu2Oタンデム」では発電層の不純物を抑制し、加えてセルサイズを拡大しセル壁面での再結合を低減することで、世界最高の発電効率10.3%の実現に成功(※6)しました。さらに、このCu2O太陽電池をシリコン(Si)太陽電池に積層したCu2O/Siタンデム型太陽電池が、Si太陽電池の世界最高効率26.7%(※7)を超えるポテンシャル(試算効率は30.0%)を有することを確認しました。フロンティア領域の研究開発においては、オープンイノベーションも積極的に活用しています。その事例として、産官学連携により量子暗号通信の研究開発を推進しています。現在、北米、欧州、アジアなど、グローバルに事業展開を図るとともに、日本や欧州他のプロジェクトを通じた産官学連携により技術開発を進めています。世界で初めて実環境下で10Mbpsを超える鍵配信速度の実証に成功し(※8)、さらには、世界最長となる600km以上の通信距離の実証(※9)や、光集積回路を用いた小型化を実現しました(※10)。また、デジタル化を通じたカーボンニュートラル・サーキュラーエコノミー(以下、CN・CE)の実現を加速するために、ドイツのデュッセルドルフに新しい技術拠点「Regenerative Innovation Centre(リジェネラティブ・イノベーションセンター)」を開所しました(※11)。新技術拠点は、CN・CEに関わる技術開発や社会実装を重視する欧州地域の中核の技術拠点として、先端的な技術開発、当社グループが保有する技術の社会実証、標準化活動などをパートナーとともに推進していきます。これらの取り組みを通じて、欧州コミュニティへ参画、パートナーとの関係を深め、科学・工学・経済・社会などの多面的視点でCN・CEに関わる社会課題の解決に取り組み、欧州地域およびグローバル社会におけるCN・CE実現への貢献を目指します。東芝グループの社会課題の解決に向けた注力技術領域の取り組みについて概説しました。経営理念「人と、地球の、明日のために。」 のもと、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向け、先端・基盤技術、そしてエンジニアリング技術の開発と社会実装に誠心誠意取り組んでまいります。デバイス&ストレージソリューションデジタルソリューション発電効率10.3%の透過型Cu2O太陽電池セル量子送信チップ図3: 試作した光集積回路と「チップベース量子暗号通信システム」量子受信チップチップベース量子暗号通信システム量子乱数発生チップ図2:Cu2Oタンデム型太陽電池※1: 2024年5月時点。※2: 量子力学の原理に基づく計算手法から導出もしくは直接的な着想を得て開発された新しい古典力学的手法のこと。疑似量子と呼ばれることもある。※3: 2021年2月発表。※4: H. Goto et al., Science Advances 7, eabe7953 (2021)※5: 2021年12月時点。※6: 当社調べ 2023年10月時点。本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。※7: 2021年12月時点でのSi太陽電池の世界最高効率。Nature Energy 2, 17032 (2017).※8: 2018年8月時点。※9: 2021年6月時点。※10: 2021年10月時点。※11: 2023年9月開所。

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