放射線を知る
放射線の種類(その他の放射線)
前回まで、粒子なのか電磁波なのか、電荷をもつのかもたないのか、という視点から放射線の種類について説明してきました。
今回は、その他の様々な視点からみた放射線の種類を説明します。
○δ(デルタ)線
放射線が原子と反応し軌道電子にエネルギーを与えた結果、励起や電離を引き起こします。

図1 励起の例

図2 電離の例
荷電粒子の直接電離を1次電離といい、1次電離の結果発生した自由電子が高いエネルギーを持っている場合、さらに他の原子の電離を引き起こすこと(2次電離)があります。この電子をδ線といいます。
ここでは、物質に入射したβ線の挙動を例とします。
β線は電荷をもつので物質中の原子核や電子と反応しやすく、物質と連続的に反応するためジグザグに運動します。
電離された自由電子が他の電離を引き起こすδ線が発生している他、制動X線も発生しています。


図4 β線が物質中で止まり、δ線と制動X線が発生する様子
○ニュートリノ
前回ご紹介したβ-壊変では電子が放出されますが、同時に反ニュートリノが放出されます。
同じように、β+壊変では陽電子とともにニュートリノが放出されます。
ニュートリノ、反ニュートリノは中性であり質量も極めて小さいため、物質と非常に反応しづらく検出が困難です。
ニュートリノというと、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さん、2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんとカミオカンデという施設を覚えている方も多いでしょう。
小柴さんはニュートリノを検出し、梶田さんはニュートリノに質量があることを明らかにしました。
○軌道電子捕獲(EC:Electron Capture壊変)
陽子が多すぎる時、陽子が陽電子と中性子に変わるβ+壊変が起こりますが、原子核が軌道電子を捕獲し、陽子が中性子に変わる反応を起こすこともあります。
これを軌道電子捕獲といいます。

軌道電子の捕獲により軌道電子の位置に空白ができ、外側の軌道の電子が内側の軌道に移動するのに伴い特性X線を放出します。

特性X線が軌道電子に当たりその電子を原子外へはじき出す場合もあります。
この電子をオージェ電子といいます。

○消滅放射線
β+壊変で放出される陽電子は、付近にある電子と反応して消滅します。
この際に、正反対の方向に0.511MeVの放射線を2本放出します。これを消滅放射線といいます。
消滅放射線は電荷をもたない電磁波(光子)です。

図8 消滅放射線
○ウラン235の核分裂の収率
ウラン235の核分裂では、大体2つの破片が生じます。稀に3つの破片になることもあります。
核分裂で生じる破片(核分裂片や核分裂生成物といいます)の質量数はランダムであり、様々な核種が生じますが、質量数95くらいと140くらいの破片に分かれることが多いです。
核分裂で生じる破片の質量数の割合を核分裂の収率といい、グラフにすると角が丸いアルファベットのMのような形になります。質量数95と140のあたりにピークがあります。

図9 ウラン235の核分裂の収率