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東芝トップページ > 研究開発・技術 > 研究開発・技術の現場から > 東芝グループの事業領域の広さがデータマイニング研究を後押し

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研究開発・技術の現場から

折原 良平
東芝グループの事業領域の広さが
データマイニング研究を後押し
折原 良平

少子高齢化による労働人口の減少は喫緊の課題で、様々な場面で技術革新や生産性効率化による省力化・省人化という変革が求められています。その手段の一つになり得るのが、膨大なデータを解析して有用な情報を取り出す、データマイニング技術です。東芝グループでは、蓄積された様々なデータをデータマイニング技術で活用し、多くのビジネス変革を実現しています。

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黎明期のデータマイニング

私が入社した1988年頃はバブルの只中で、資金が豊富だったこともあって、人間の思考・発想を支援するという大きなテーマの研究をさせてもらえました。例えば、私たちが冷蔵庫にある食材から、自分の過去の経験・知識をベースに料理メニューを考えるのには限界があり、いつも同じメニューになりがちです。しかし、人工知能にインターネット上にある大量の料理レシピと、冷蔵庫の中の食材という情報を与えることで、自分一人では思いつかないような、今ある食材で作成可能な幅広いメニューを提示することが可能です。レシピが大量に利用可能で、素材や調理に関する知識が整理されていることから、料理は人工知能には取り組みやすいテーマといえます。微妙なニュアンスを必要とする和食など、人間にはかなわないところもありますが。

また、東芝がPOS(Point of sales)の製造・販売を手がけていたことから、スーパーでの売上げ予測に関する研究も行いました。POSから得られる商品や売り上げに関する膨大なデータを解析し、売れ行きが悪い商品について調べてみると、少し値段が高いことがわかりました。売れにくいならば値段が高い商品を陳列させておくのは無駄だと思いがちですが、実はこの商品をなくすと、売れ行きの良い商品まで売れなくなることがわかりました。値段の高い商品と比較することで購買につながっていたのです。このように、データを分析することで、潜在的なルールや因果関係を明らかにすることが出来るのが、データマイニング技術です。
私の実家は呉服屋を営んでいたのですが、反物をお勧めする際に、あえて高価なものも一緒に数本お見せしたほうが買っていただきやすい、ということがあります。人間が長い経験で培った知見を、データマイニング技術でも獲得することを実証することができ、大きな喜びを感じました。

もう一つ初期の取組で、2005年頃のことです。インターネットも整備され、web上の掲示板などを使って製品への感想やコメントが発信されるようになっていました。東芝では商品企画や技術者が市場の需要や反応を調べるということは以前から行われていましたが、人手が必要な調査が主流でした。しかし、インターネットの普及とともに分析するデータ量が桁違いになり、人手に頼るには限界があることに気づきました。そこで、インターネット上のデータを分析するツールを開発しました。今でこそ一般的になりましたが、「インターネット上でくすぶっているユーザの不満」を発見し、明示的にキーワードを設定することなく不満の原因となっている品質事項を抽出する、当時としては画期的な試みでした。その結果、人の目では見逃されていたインターネット上の重要な書き込みを発見し、それが事前の問題解決に役立ちました。これも、データマイニングが「業務の効率化」や「人手不足の解決」に役立つことを社内で認知してもらった一例です。

新しい技術はなかなか活用してもらえなかったり、信頼してもらえなかったりするのですが、東芝にある幅広い事業分野での適用を積み重ねることで、社内でも徐々に信頼を得られるようになっていきました。

データ分析の分類表

表1:データ分析の分類
条件定義が容易な分析を選択的分析、データに基づく定義の分析を包括的分析と呼ぶ。分析による出力と意思決定との隔たり(直接的または間接的に影響)を別軸に分析を分類している。
(引用:【東芝レビュー】VOL.69 2014年7月号)


工場への導入、葛藤と成功

最近では四日市の半導体工場での生産性改善に取り組みました。市場の高品質化・低価格化の要求に応えるために、生産過程で不良品発生率を低下させることが常に課題です。
既に工場では、数万工程に対応した自動搬送システム、検査装置、製品管理システムから、毎日約20億件を超えるデータが収集され、これらをグラフや数表などに見える化し、熟練した現場スタッフが解析にあたっていました。
しかし製造工程がさらに複雑化する中、データ量が急激に増加し、解析に時間を要するようになったため、データマイニングの導入を試みました。
草の根活動として始めた当初は、まだ工場側の信頼も得られなかったため、私たちが欲しいデータを依頼しても回答に2週間くらいかかるという状態で、私たち研究者と工場の技術者との間で連携が密に取れずにいました。こんなに時間をかけていてはデータマイニングを活かせません。

またデータをどのような視点で読み解くべきかには、現場の声が欠かせません。データを闇雲に分析してみても、欲しい成果は出ないのです。そこでまず、私たち研究者が数週間工場に駐在して現場を学び、工場側との意志疎通を改善しました。また、BigReportという総合データベースシステムが工場側で整備された結果、データのやり取りが迅速になりました。
このような地道な努力を積み重ねた結果、歩留り解析支援システム「歩留新聞」の開発に至り、不良1件当たりの解析時間が平均6時間から2時間と、人力での解析時間に比べて約1/3に短縮でき、生産性向上を実現しました。

これはデータマイニングの技術だけでは実現しなかったことです。研究者である私たちも製造現場で製品知識を深め、工場の技術者と信頼関係を築くことで、研究開発と生産の両方で成果を得る、東芝ならではの活動だと感じています。


データマイニングの拡がり

データマイニングは、データ量が多いほど威力を発揮します。

ビックデータという言葉が使われるようになったのは21世紀以降ですが、前述のように東芝ではそれ以前から膨大なデータを収集・分析し、その重要性を認識していました。また幅広い領域で事業を展開していますから、データマイニングの研究には最適な環境でもあります。例えば、ソーシャルメディア上のデータを活用した社会インフラの老朽化診断、保守履歴を活用した昇降機部品の寿命分析、太陽光発電所と気象データの活用による太陽光発電所の性能改善への取り組み、特許や株価のマイニングなど、適用範囲は多岐にわたります。

健康診断結果のデータマイニングというものもあります。過去数年の健康診断の数値を健康支援に役立てるものですが、多くの東芝社員の協力を得て、蓄積された膨大なデータを活用することで実現しました。これも、東芝だからこそですね。

東芝のデータ分析技術イメージ

図1:東芝のデータ分析技術
社会インフラ設備・システムからコンシューマー機器まで、多様な事業活動から得られるデータで、高度な分析方法とデータベースを開発してきた。
(引用:【東芝レビュー】VOL.69 2014年7月号)


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将来に向けて

自分で書いたプログラムが動き、さらにそこから新しい発見をすることはなによりの喜びです。様々な切り口で解析技術を使うことで、これまで多くの気づきを得てきました。

社外での活動の機会にも恵まれています。
私自身は、人工知能学会や情報処理学会で活動する他、様々な勉強会に参加してコネクションを得たり、大学で教鞭を執ったりしています。
データマイニングには分析の視点を養うことも大切ですが、こうした活動は良い刺激となっています。社外の研究者や学生との会話から知見が広がることも多々あります。

事業の幅が広い東芝グループで様々な部門と連携しながら、社外からの刺激も受けながら研究できる。この恵まれた環境で、これからも社会の課題解決に現場視点で取り組んでいきます。


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折原 良平
博士(工学)

分野
データマイニング、ビッグデータ解析
所属研究所
研究開発センター 研究主幹
登録特許
国内登録特許:81件
所属学会
一般社団法人 人工知能学会 別ウィンドウマーク 副会長
一般社団法人 情報処理学会 別ウィンドウマーク フェロー
表彰
2017年,一般社団法人 人工知能学会 2016年度現場イノベーション賞・金賞
2013年,一般社団法人 情報処理学会 学会活動貢献賞
2011年,一般社団法人 人工知能学会 人工知能学会功労賞

※2018年3月30日公開。ページの内容は公開当時のものです。

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