情報家電の主役を目ざす東芝ワープロ

山崎 銀蔵


 昨年は,パソコン市場が飛躍的に伸びてブームとなり,その影響を受けてい
るワープロですが,初心者購入比率(注1)や家庭普及率(注2)では多勢を堅持し
ており,それがワープロの特徴そのものであるとも言われています。先日のあ
る新聞で二代目水谷八重子さんがパソコンを購入して「ソフトのインストールっ
て何?」,「印刷機を買ってきたけど,フィールドのレイアウトって何?」な
どと悪戦苦闘している記事が紹介されていました。この記事がパソコンとワー
プロの商品コンセプトの違いを明確に物語っています。パソコンの汎(はん)用
性に対してワープロは専用性を目ざしており,“使いやすさ”を第一の主眼と
しているワープロにはこのようなエピソードはあまり聞かれません。

 さて,ワープロの生まれをひもときますと,その商品化は当社が最初であり,
1978年9月26日(注3)に630万円の日本語ワードプロセッサ“JW-10”を発表した
時を起点としています。ワープロの研究は,さらにその約7年前に当社の中央
研究所で,手書きより速い入力,ポータブル,文書の伝送,の三つの商品コン
セプトを目ざしてスタートしました。その後,小型・低価格化が指向され,
1985年に10万円を切った当社Rupo JW-R10の爆発的なヒットで市場が飛躍的に
拡大し,ワープロもパーソナル時代に突入しました。以来,さらに使いやすさ
が加わった四つの商品コンセプトを実現する努力はつねに維持され,今日に
至っております。

 現在のワープロの技術動向は,ディスプレイや印刷のカラー化,スキャナや
ビデオによる画像入力,OCR (光学的文字読取り装置) による文字入力などの
入力容易化が進んでいますが,当社が昨年業界で初めて搭載した英日翻訳支援
や画像の輪郭抽出などは,さらに入力後のデータ処理の容易化をねらった機能
であります。また,ワープロ本来の機能であるかな漢字変換も重要な技術であ
り,全文まるごと変換による操作性の向上とともに,AI (人工知能) 用例や精
緻(ち)化文法の採用により業界最高水準の変換率98 % (当社調べ) を達成して
います。このような専用機としての入力や使い勝手の容易さの追求以外に,パ
ソコン同等の機能として本格的な表計算ソフトウェアを搭載したビジネス用途
向けのJW98シリーズも当社だけのロングラン商品となっております。

 昨年から家庭内の情報機器としてワープロとパソコンが競争していますが,
21世紀に向けてどのような展開になるのでしょうか? これまでは単独で使わ
れることが多かったワープロですが,今後はインターネットを一例とした家庭
内での通信応用が増加するものと考えています。サイバーモールでの買い物,
就職情報収集,学術情報収集などはすでに実現されているものであり,将来は
クリスマスカードや年賀状も電子メールでなされるのではないでしょうか? 
このような将来に向けてもっとも好位置にいるのがワープロであり,初心者に
やさしいワープロが家庭内での情報家電の主役をつかむことを目ざして努力し
たいと考えております。

 以下の特集では,現在の当社ワープロにおける技術動向とその内容について
ご紹介いたします。


(注1) 平成7年度業界調査:ワープロ:62.2 %,パソコン:24.6 %
(注2) 平成7年度総務庁統計局調査:ワープロ:43.6 %,パソコン:16.6 %
(注3) この日は日本記念日協会により“ワープロの日”に制定されている。

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